年金生活者のパソコンの買い替えはChromebookで

年金生活者とパソコンの買い替え

みなさま、5年間留守にしてすみません。5年もたって、職場でも誰からも若手あつかいを絶対してもらえない今日この頃なのです。もう、アラウンド還暦なのであります。

そうすると、同僚とか、お世話になった先生とかが、どんどん年金生活に突入してます。そういう人に個別に説明するのが面倒なので、この記事を書いています。

日本人全体の健康寿命がのびて、アラカン(アラウンド還暦のこと)の私なんかより精力的に研究なり社会活動なり、現役か、それ以上の密度で頑張っておられる元同僚、恩師がさくさんいます。ただ、そういう皆さんは、なんだかんだいっても現役の頃よりもお金がないので、パソコンを買い替えるのが大変なのです。かつてのPC-9801の頃なら、40万くらいで買ったパソコンを15年くらいつかうのが普通だったのですが、現在は、長くても、Windowsのバージョンが上るタイミングくらいで買い替えるのが、普通になっています。年金の中から、10万とか、20万とか支出するのは大変です。

パソコン業界は、Windowsのアップデートという独占の優位性をつかった商法によって、マイクロソフトだけでなく、インテルとか、パソコンメーカーで結託して定期的に税金のようにお金を稼ぐビジネス・モデルで成り立っているかのように見えます。私の妄想でなければよいのですが。

年金生活者の皆さんは、それに対抗する必要があります。この数年のうちにWindows10を使い続けることはできなくなるのですが、活動的なみなさんにとっては、メールや文書作成、エクセルでのもろもろの計算をしつづけなければなりません。でも、そのために10万とか20万とかの支出をせずにすませたいはずです。

Chromebookとはなにか

そこでChromebookです。Chromebookはマイクロ・ソフトのWindowsではなく、googleが開発しているChromeOS上で動くパソコンです。最初のバージョンが90年代のWindowsとちがって、このOSは最近になって開発されおり、Windowsのレガシーな部分がないために、性能の低いパソコンでも楽々動きます。そのため、LenovoとかHPとかの一流メーカーの新品を余裕で4万くらいで買えます。アマゾンとかセールスの時期を狙えば、2万で入手することも可能です。OSが軽いこともあって、2万円で入手可能な機種も楽々動きます。

ちょっとパソコンいじりが得意で、Vistaとか、Windows 7とかの古いパソコンが押し入れにころがっているという方なら、もっと安く入手することができます。ChromeOS FlexというChrome OSのバージョンがあって、それは、古いパソコンにインストールして使うことができます。メモリが4ギガあり、できれば、4コア以上のCPUならなんとかなるんじゃないでしょうか。これは、現在のChromebookの標準的なスペックです。ハードディスクの容量は200Gあれば十分です。32GのChromebookが普通にうられていますので。

Chromebookでできないこと

悪いお知らせをすると、Chromebook上でMicrosoft officeを少なくともWindowsと同じ使い勝手で使用することはできません。使えるソフトウェアは、Windowsとほぼ同じ使い勝手のgoogle chromeブラウザと、そのWebアプリ、AndroidスマホのOS、Linuxのソフトです。ChromeOS用のマイクロソフトオフィスもあり、たとえば、中身はほとんどChromebookであるAmazon Fire 10などは、買った状態でChromeOS版のMicrosoft Officeが入っています。Windowsとの完全な互換性は期待できないかもしれませんが、それを買ってしまうのも手です。(ごめんなさい事実誤認がありました。)

ChromeOS版のMicrosoft officeを買わなくとも、Chromebookでは、オフィスのファイルをクリックすると、googleデスクトップがたちあがって、そのファイルを読みこんでくれます。もらったファイルの内容を確認する用途なら十分ですし、レイアウトの正確さが要求されるのなら、先方にpdfも送ってくれるように依頼すればよいでしょう。

ただ、google表計算はちょっともたつく感じがあって、私なんかはストレスを感じてしまいます。そのような人は、スマホ版のWPS officeを入れるのがよいかと思います。WPS OfficeはMicrosoft officeときわめて互換性の高いソフトで、VBAつまりマクロ機能さえつかわなければ、十分にMicrosoft officeの代替になります。

PC-9801のころから、テキストファイル中心に作業をしている方なら、以上の注意は必要ありませんね。linuxが動きますので、awkやらsedやらgrepやらが使い放題です。(ただ、端末上での日本語変換の設定がちょっと大変です。)

また、仕事でLinuxを使っていた方は、こんな記事必要ないですね。MicrosoftVS codeの流行を尻目に、5世代前くらいのPCで、太古からの伝統のviとかEmacsとかTeXでがんがん仕事をしてください。

教育とChromebookとデジタル・デバイド

研究を続けている皆さんにちょっと関心をもってもらいたいのは、Chromebookは、インターネット社会のデジタル・デバイドから子どもたちを救おうといういくつかの試みの成果を営利企業、それも、世界的な大営利企業(この表現ですらとてもひかえめです)であるgoogleが商業化する形でできあがっていることです。

Chromebookの安価なハードウェアの原型は2000頃くらいに少し流行しかけたネットブックでしょう。(安価なスマホの製造技術の影響も無視できません。)そのネットブックのスペックに大きな影響を与えたのは、MITのOpen Laptop per Chilp (OLPC)です。この運動は、発展途上国の子どもたちに100ドルの独自開発したPCを配付しようとし、実際に配付もされましたが、そのスペックをパクったネットブックが流通したこともあったのでしょう、2010年以降は配付が停止しています。

OLPC自体は、私からはみれば停滞にうつりますが、ハード的には、OLPCネットブックの末裔である安価なChromebookは日本のギガスクール構想でも、多くの学校で採用されています。Chromebook自体が教育分野でシェアを伸ばしています。

さきほどあげたChromeOS Flexは予算の少ないアメリカの学校に対して、いらなくなった古いPCにChromeOSをインストールして教育環境をととのえる活動から生れました。文字通り教育目的の活動の直接的成果です。それをリードしていた企業の資産をgoogleが買い上げる形で、google本体の事業となりました。

教育目的とはいえませんが、ChromeOSのカーネル(OSの根幹部分)はオープンソースLinuxです。Chrome OSのアプリの中心部分であり、Microsoft Edgeブラウザの土台であるGoogle Chromeブラウザもオープンソースを土台にしていますが、営利企業であるGoogleの事業です。しかし、Linuxは発明者のリーナス氏が現役でリーダーシップをとっていることもあり、初期のオープンソース活動の自由な雰囲気を維持しつづけています。大規模なオープンソース活動がgoogleなどの企業のイニシアチブに移行していく中で、Linuxの開発は初期のインターネットの理想主義的な側面をもちつづけています。

Chromebookは、確かに営利事業の産物ではありますが、こういったデジタル・デバイドから子どもたちを救おうという活動の成果にもとづいています。この活動をGoogleが担っていることの意義は微妙です。世界的な企業であるGoogleが関与することで、過去の活動の成果が全世界的に広がる積極面は否定できません。他方で、Google営利企業です。一見、教育の平等をめざしているかのような活動でさえ、その背景にはGoogleの独占的な地位を貧困層まで押し広げようとする意図を類推せざるをえません。

政府は子どもと高齢者にChromebookを配付せよ

OLPCの目的とも関わりますが、いまや社会的インフラとなっているPCが定期的に買い替え必要な製品でなおかつ10万ちかくという支出をせまられる現状は不公正です。政府は、学校だけではなく、すべての年金生活者と貧困家庭にChromebookのような安価で仕事や勉強をまかなえるPCを配付すべきです。

それと同時に、各ウェブサイトはWord Pressに代表されるようなJavascriptでPCに負担をかけて、見栄えをよくする努力をやめて、阿部寛のホームページのような低スペックのPCでも問題なく情報にアクセスできるネット環境の整備に協力すべきです。

そういう条件がととのえば、子どもは親の経済状況に左右されずにさまざまな能力を伸ばしていけますし、年金生活者は現役時代におとらぬ社会活動、研究活動をつづけていくことができます。

今後の予定

実際にChromebookを仕事に活用するには、いくつかの留意事項があります。簡単に書きましたが、ネット上にさまざまな情報があります。Chromebook自体の購入リンクも含めて、必要な情報を追記していくと思います。