osakanaさんへの返答

長いこと放置していてすみません。私が授業で学生に知ってもらいたいと思っていることにストレートにつながっていて、ちゃんと返答したいと思っておりました。ほんとに遅くなってすみません。

私は今、大学を休学中ですが、一般教養で経済とは経世済民からきていると習いました。そこで、人々を幸福にすることが目的なのに、資本主義に偏っている日本の経済(世論?)で、果たして日本人は幸せになれるのだろうかと疑問に思いながら経済学の講義を受けていたのです。
その講義を受けながらも、そんなにお金が大事なのならば、日本はとっくに国民総幸福が高くなっていてもおかしくないのになぁ...マルクスとかの時代からずっとある学問なのに経済学ってなぜ民を救えていないままなのだろう。と大変失礼なことを考えていました。
これを期に私も詳しく経済学について勉強してみたいと思いました。

私も今の日本は幸せな国だと思っていません。なにより、若い人やホームレスのような人達の生存権がないがしろにされています。物質だけで人間は幸せになれるわけではありませんが、食べるに十分なものが得られず、なおかつ、社会がそのことに十分な関心をもっていない状況は、不幸としかいいようがありません。

経済学の根本として理解していただきたいのは、お金そのものは、ただの紙切れで、人の腹の足しにはならないということです。人が食べれるものは、食糧です。これは人間の労働によって作られます。人びとの生存権を保障するために、最低限必要なことは、みんなが働いて、人びとが食べるに足るだけのものを作ることです。お金は、そのみんなで作ったものを分けあうとき、分け前にあずかるための請求権の証書にすぎません。

確かにお金の問題は経済にとって重要ですが、状況をまちがってとらえないためには、誰が、どうやって、何をいくつつくっているかという、生産の問題を押えることだと思います。お金自体が人びとに物をもたらしているという錯覚に我々はおちいりがちですが、そうなる十分な理由もあるのですが、それは錯覚にすぎないのです。

日本は高齢化で働けない人の比率が大きくなっています。したがって、働ける人にはがんばって働かなければなりません。働ける人がみんな働いて、一人一人の働く人びとの生産性があがらなければ、日本はこれからどんどん貧しい国になっていきます。

ところが、自分は貯蓄をもっているので、それで食べれると思っている人(とりわけ、裕福な老人)は、若者の失業問題に無関心です。彼らが貯蓄で買うものも若者をふくめた人達が作ったものです。したがって、若い人の失業がふえれば、いつか彼等の消費できる物も少なくなってしまうでしょう。

お金は確かに重要です。失業を減らすために政府はお金をうまくコントロールする手段があります。それは根本的には、物がたくさんつくれても、お金がなければ物が買えない社会であるということにあります。今日のもうひとつの記事の松尾匡さんは、そうした問題に長年とりくんで、啓蒙をしてきた人です。よかったら読んでもらえればと思います。

不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門(双書Zero)

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今の左翼といわれる人びとの多くはお金がなければ物が買えない世の中を恨むあまり、若者に職がない、ホームレスが増えているといった状況を放置しているように思えます。お金憎しが現実を見る目をくもらせています。そういった連中が主観的には社会のことを考えているようでも、若者の支持を得られないのは当然のことです。

なんで今の日本が幸せではないのかという問に対する私の答えは、人間の生活の基盤は物であり、それは人間が働いて作るのだという、あたりまえの認識が社会の選択や政府の政策に十分に反映されていないからだということになります。経済学を勉強して、個人がすぐに幸せになるわけではありませんが、経済学の知識を皆が共有すれば、避けられる不幸がたくさんあります。