加藤涼さんの「現代マクロ経済学講義」はマクロ経済学プレイングマニュアル

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門

相当のおじさんしかわからんネタだけど、昔、たしか宝島社の前身のJICCという出版社から「MS-DOSプレイングマニュアル」とか、「MINIXプレイングマニュアル」というシリーズがでていた。要するに、遊びながらMS-DOSとかMINIXをおぼえてしまおうという企画だ。この本をぱらぱらめくって、これはマクロ経済学のプレイングマニュアルだと感じた。

以下、ぱらぱらめくっただけの印象で書いているので、間違えてたらすまん。この本の立場は現代的なマクロ経済学の手法的な基盤はリアルビジネスサイクルモデルで現代的なマクロモデル(動学的一般均衡モデルもしくはNew IS-LMモデル)はリアルビジネスサイクルモデルというパイ生地をこねてつくったピザのバリエーションとしてとらえられる。

この本を通して、マクロモデルは最終的に線形の差分方程式におとして分析されるので、わりかし簡単にシミュレーションができる。もとのモデルを差分方程式に直す手順も第七章レシピ的に書かれており、その上、数値計算ソフトのMatlabでのシミュレーションのコードものっているし、ホームページから各章のMatlabコードもダウンロード可能である。要するに、この本とMatlab(あるいはそのフリーのクローンのoctave)があれば、その日から、New IS-LM遊びをはじめられる。

マクロモデルは現実のデータが入手しやすいにもかかわらず、この本のように遊びながら勉強できるタイプの本はあまりない。公務員試験にでてくるような計算問題がでてくるくらいで、あんなのは連立方程式の練習でおもしろくもなんともない。だが、この本は遊べる。私もこの本で遊ぶつもりである。

ええかげんにしかみてない上なんで、これもちがってたらごめんだけど、遊びの道具としては差分方程式によるシミュレーションはとってもいいのだが、最近した共同研究(研究者としての最後から2番目の仕事 - 痴呆(地方)でいいもん。)の相方が微分方程式オタクで、そんなひととばっかりつきあっているんで、おもってしまうのだが、もとのモデルは非線形微分方程式なわけで、私らの論文のはいっている本の浅田統一郎氏の論文にあるように、サイクル起こしたり、カオスになったりといろいろへんちくりんなことが起こる可能性があるのである。線形近似して、差分方程式に落とすのはそのあたりをばっさり切り落としているわけで、その辺りについての注意はあってもいいんじゃないかと感じた。非線形動学関係の仕事もあるBenhabibも参照されているので、そのあたりちゃんとした話がすでにあるんじゃないかと思うんですけど、教えてクレクレタコラ

あー、それと貧乏な学生さんや私のようにソフトウェアには金を払わんケチくさい人間のためにはOctaveつかえばMatlabのかわりできますくらい書いといてもいいんじゃないでしょうか。こことは関係ないけど、微分方程式のシミュレーションに関してはMatlabよりOctaveの方が上だったような気がするし。

追記

あー、動学云々はどうも私がいいかげんにながめていただけのことを暴露しただけのようだ。じっさい、そうだし。こっちのちゃんと読んでる片岡さんの書評を読んください。

http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20070105/p1

私はあそびたいだけです。いいおもちゃが手にはいってうれしい。でも、今ゆっくり遊ぶ時間がない。ブログなんか書いているからなんだろうか。

えーと、ちょっといそがしくて、確認に時間がかかりそうだし、今手元にないし、よまないでいいかげんに書くけど。ブランチャード・カーン条件って、でも、線型近似したシステムについての条件ですよね。浅田統一郎さんのも、似たようなモデルでサイクルおこっているし。適応的期待の項って不安定性増すんで*1、悪さしそうですね。もし、2次元のシステムならそうそうへんなことおこんなさそうだけど、3次元以上だと、どうなんですかね。と、3次元以上の力学系はまったくしらんことの暴露とよんでないことを暴露。あー、そういうわけで、まだぜんぜんちゃんと読めとらんから、あんま本気にしないでね。

ちゃんと読んだら全部DELしてしまう悪寒。

*1:安定性増すとおもわれてるけど、実は逆。堂谷=稲葉=大坂論文のタネ