高増明他『ポピュラー音楽の社会経済学』
これは、年末にイラストを担当している吉田雅明さんからいただいて、ちゃんと紹介したかったのですが、のびのびにしているのもなんですので、簡単に紹介を。
- 作者: 高増明
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2013/12/25
- メディア: 単行本
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この本の出版はとてもうれしいです。というのは、経済学部で音楽に関連したテーマで卒業論文を書きたいという学生はかなり多くて、そのような学生が始めにとりくむ本として紹介できる本がいままで皆無でした。今後はこの本を重要な参考文献とする卒業論文が日本中の大学に提出されるのではと思います。
この本の重要な特徴は高増さんをはじめ、音楽を好きな人が書いていることです。こう書くと、なんじゃそれといわれそうですが、たとえば、コンピュータ産業や半導体産業は多くの研究者の注目をあびてますが、「コイツ、本当はパソコンに興味ねえだろ」的な本が多いのにあきれます。私のような中途半端なパソコンオタクからしても、コンピュータ業界の人間がほぼ全員しっているようなことを知らない研究書があふれているのはどういうわけでしょう。プログラミングコードが書いてあるコンピュータ史をわたしはまだ見たことがありませんが、この本にはコード進行にもとづいた楽曲の分析があります。
この本というより、高増さんの以下のインタビューもあわせての印象ですが、ちょっと中島梓の『コミュニケーション不全症候群』を思い出してしまいました。中島は文藝のカラオケ化を批判するのですが、佐村河内がもてはやされる現状を批判する高増さんも同様な方向があるのではと感じています。
- 作者: 中島梓
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/12
- メディア: 文庫
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しかし、私はたたとえばバンド・ブーム(すでに古いですね)や駅前で若い人達のときにはヘタクソな弾き語りが蔓延するような情況は結構歓迎しています。
音楽でないですが、娘がフィギュア・スケートをやっていたのですが、元オリンピック選手のコーチが親のオリンピックへの夢をつついて、大金をせしめるようなビジネス・モデルが蔓延しているを目撃して、驚きました。フィギュア・スケートというのは子供にとって、とても楽しいスポーツで、子供が楽しそうにクルクル回っているを見るは親にとってもとても楽しいことです。それで満足するだけでいいと思うのですが、どうもフィギュア・スケート界の一部には、親のへんちくりんな上昇意識を刺激して金をせしめるという風潮がかなり根強くあるように感じました。
音楽界でも、一部にはそういうのがあるのでしょうが、ヤマハのエレクトーン教室のようなクラシック界などのプロの世界とは切れた音楽のジャンルがあるのは、私にはいいことで、レベルの低い音楽をカラオケ的に演奏する人びと相手の商売を楽器業界がビジネスとして根付かせているのは、とてもいいことではと思うのです*1。
さきほどあげたバンドブームも、カラオケも、プロ仕様のシンセサイザーがアマチュアにも買えるようになった情況と深く関係があり、ムーアの法則とアマチュア音楽やカラオケの関係というのは、この本を出発点とするような研究の重要な論点になりそうに思うのですが、いかがでしょうか。
と簡単な紹介のつもりがすきかってなこと書いてしまいました。
*1:ただ、エレクトーンってなんであんなに高いんでしょう。機能的にはPCM音源の鍵盤3つ(一つはペダル)であの値段はちょっとぼったくりに思えます。手軽に素人が鍵盤楽器するなら、KorgのMicro Korgあたりがいいんじゃないでしょうか。KorgはYAMAHAの関連会社なんで、YAMAHAでMicro Korg教室とかすれば、私は通います。 KORG アナログキーボードシンセサイザー ボコーダー microKORG MK-1 マイクロコルグ 37鍵