数学を逃げて経済学部にはいってしまった学生さんたちへ

えーと今日、ある学生さんにえらそうにお説教をたれたのですが、よくある問題なので、自分の頭を整理するためにメモ。

本当に数学を逃げて、「文系学部」である経済学部にはいってしまった人は幸いです。神の御加護があることでしょう。逃げずに公式の丸暗記をしてしまった人とはちがい、あなたはゼロから出発できます。なにも現在もっていませんが、といっても、借金もありません。

あなたはまじめ経済学を勉強しようとするなら、今までしらなかったことや聞いたことがあるが、まじめに取り組む意欲がわかなかったことをしなければなりません。でも、あなたのまわりの数式をあつかえる学生のほとんどが、手順を丸暗記しているだけだということを御知らせします。あなたには理解しにくいことかもしれませんが、手順の丸暗記を就職試験や大学院試験に生かせる学生はまったくといっていいほどいません。それどころか、そういう学生は経済学を理解するうえで大きなハンディを背負っているのです。

また、高校の数学のすべてが経済学で必要なわけではありません。その辺の無駄な勉強もしなくてすんだことを、あなたの体のどこかにいるとても賢い者に感謝されてはどういかがでしょうか。

私の先輩の一人は大学院にはいるまで、まるっきり数学をしなかったそうです。それでも彼は私が知る人々のなかで数学を最もよく理解している人の一人です。あくまで想像ですが、彼が高校時代ガリ勉だったら、はたして数学のエキスパートになれたでしょうか。

ただし、あなたは不幸にして、コンプレックスや数学へのアレルギーにかかっているかもしれません。これの治療期間にくわえて残念ながらほとんどの大学では初等レベルの数学を一から勉強することをサポートするしくみがありません。ですから、あなたは平均的な高校生や中学生なら授業で一週間でおえる勉強に数ヶ月かけることになるかもしれません。でも、それを短くすることは不可能だとおもいます。あせって無理にたくさん勉強しようとしたりしたら、コンプレックスやアレルギーをこじらせたり、丸暗記にたよって借金だけを増やすことになります。いやになったら、何週間でもやすみましょう。

適当に丸暗記で数学をのりきって経済学部にはいってきた人。あなたにはすでに神の御加護がありました。それによって偏差値をいくらかのばし、実力以上の評価を入試でうけたはずです。しかし、それは借金であるように思います。

もしかしたら、あなたは積分の計算がらくらくとけるのかもしれません。経済学部での授業での練習問題もやりかたを覚えれば、ゆうゆう解けるのかもしれません。しかし、中学生レベルの数学さえも、計算はできるが、理解はできない状態なのではありませんか。

あなたが単位がとれればいいというのならば運がよければ、問題なくやりすごせるかもしれません。しかし、経済学の教科書が意味することを理解するには、数学が手順の丸暗記とはちがったものであることをいずれ理解する必要があります。そのためには一旦身についた数式をあつかう作法をあらいながす必要があります。要するに借金を返さなければならないのです。あなたにとってそれが今かどうかは私にはわかりませんが。

ただ、あなたが借金をかえす必要がわかるのは、いままでの数式とのつきあい方ではおはなしにならないことを理解したときです。それは勉強をかなり積んでからでしょう。それまではここに書いてあることをわすれてください。そして気が付いたときに、ここにかかれたことを思いだしてもらえば、うれしいです。そこから、勉強しなおす必要がうまれますが、もうその時点で借金返済の目処はついたようなものです。そこからの私のアドバイスは完全に数学を逃げたひととかわりません。

最後に、まじめに勉強する気がない学生さんへ。正直に生きれば、神の御加護があることでしょう。うえに書かれたことを気にせず、勉強から逃げるときはしっかり逃げましょう。単位さえもらえればいいのに、出席をとらない授業に出るのは効率的ではありません。そういう人こそ経済学的なマインドから一番遠いひとといえます。(経済学的なマインドをもっているのがえらいわけではありませんが。)あなたがもし、そういう学生なら、あなたは授業にでなくて単位をとることにこそエネルギーをそそいではどうでしょう。教師の協力はえにくいかもしれませんが(私は自分の単位以外への相談なら個人的にうけます)、先輩や友達からの情報や助言がやくにたつでしょう。もし、就職試験などで必要で不安ならば、そのときこそ、試験のために勉強が必要だという現実に向きあってくはいかがでしょうか。この逆のことをし、いいかげんに勉強することが長い目でみれば、結局借金になるように思うのです。

補足:独学で経済学のために数学の勉強をするのなら、A.C. チャン『現代経済学の数学基礎』の上巻 現代経済学の数学基礎〈上〉 が最適です。はじめの4分の一くらいが高校や中学の範囲になります。中学校や高校の範囲をかさなる部分で意味のわかりにくい部分はやさしめの受験参考書(まちがっても「青チャート」とか「赤チャート」とかは見ないでください)を参照してください。

上の本をよんで、わからないことは遠慮しないで、数式をつかう授業をしている先生のなかで最も信頼できそうな人をえらんで質問しにいきましょう。先生をえらぶ基準は担当科目より、人物重視でいきましょう。質問しにいく勇気がなくても、わからないところにアンダーラインをしたり、本の裏表紙にメモするだけでも全然ちがいます。不思議なことですが、疑問点をチェックしておけば、ある日とつぜん、理解できることがあります。