経済学(経済モデル)が難しいという前に
勤務時間中に書いてますが、明日の授業のネタを整理するためなんで密告しないでね。
経済学が難しいという人は経済学部でも多いです。実際、3年生、4年生になっても、マクロやミクロの最初の授業で習うようなことを理解していない人は大変多い。しかし、教師始めて10年以上たってやっと気がついたのですが、そういう人は経済学以前のとこでひっかかっているじゃないでしょうか。
例として、マクロで一番最初にならう をとりあげます。3年生や4年生のみなさんは、何度も授業でみたはずの式です。いきなり質問ですが、Y, C, I, Gってなんでしたっけ。
ここで、つまってしまった人は3年間マクロ経済学を勉強していようが、4年間勉強してようが、いえいえ、100年間勉強していようが、マクロの初歩の初歩すら理解していないことになります。経済学で数式がつかわれている時にまず必要なことは、
- 変数(式にあらわれている記号)と言葉の対応をちゃんと確認すること
です。ここでは、Yは国民所得(GDP)、Cは消費、Iは投資、Gは政府支出です。では、2番目の質問です。投資ってなんでしょうか。この質問への答としてよくあるのは、「株式投資」とか「海外投資」とかですが、ここででてくる投資にはそのような意味は一切ありません。マクロ経済学では機械のことを資本ストックと呼びます。投資とは、新品の機械のことです。新品の機械のことを株のことと誤解していたら、わけがわからなくのはあたりまえです。したがって、変数と言葉の対応ができていることの次に必要なのは、
- 変数としてあらわされている言葉の意味をちゃんと理解すること
です。
みなさんの先生は私のような研究者としておちこぼれのヤツも含めて、上の二つのことはほとんど無意識にやってしまっています。だから、みなさんがつまづいているとき、多くの教師はそんなとこでひっかかっているなどとは想像もつかないことが多いのです。たとえば、箸が置いているテーブルの前で固まっている外国人をみて、彼は本当は箸が物を食べる道具だと知らないから固まっているのに、箸の使い方がわからないと誤解しているような状況でしょうか。だから、あなたがたが質問に行くと、数式の展開とか、箸の使い方について、いろいろといわれるかもしれませんが、多くの場合、みなさんがわかっていないのは、箸が食事の道具であるということだったりするのです。
この二つのことへの対応はごくあたりまえのことです。第一に変数がどのような言葉をあらわしているのか、きちんと確認し、できればモデルごとに憶えてしまうことです。マクロ経済学では、いくつかの言葉については大体、同じ記号がわりふられています。さきほどのY,C,I,G以外では、K:資本ストック、L:労働(Nがつかわれることもある)、P:物価、:インフレ率、M:名目貨幣供給量、i(あるいはr):利子率などです。
しかし、それ以外の記号については、モデルによって、あるいは同じモデルでも、説明する人によって違う言葉がわりふられている場合があるので、モデルと切り離してのまる憶えはあまりおすすめしません。(たとえば、よくつかわれるものでも、マクロ経済学では、Cは消費ですが、ミクロ経済学の企業理論では、Cは総費用です。)その時時で、記号がどのような言葉を差しているか確認しましょう。*1
それと言葉の意味は教科書とノートなどで確認しましょう。最近のマンキューとかスティグリッツのようなよく売れているアメリカの教科書と多くの日本の教科書では章の初めとか、終りにその章のキーワードの一覧が載っています。数式で使われているいないに関らず、そうした一覧に載っている言葉の意味はすべて理解するようにしましょう。
それとノートを取るとき、あるいは計算問題を問いているとき、それぞれの記号がどの言葉に対応しているか頭に置くようにしましょう。この話をある学生に話したとき、彼女は「じゃあ、記号の一覧をつくって、手元に置いといたらいいですね」といいました。いい工夫だと思います。
追記:
ミクロ経済学では、以下の記号と言葉の対応が一般的です。
- 需要供給モデル(部分均衡モデル)
p:価格、x(あるいは、q):数量、(あるいは):需要量、(あるいは):供給量、:均衡価格、(あるいは:均衡取引量
- 企業理論
y:生産量、TC(あるいはC):総費用、ATC(あるいはAC)平均費用、MC:限界費用、FC:固定費用、VC:可変費用、AVC:平均可変費用、AFC:平均固定費用
- 消費者理論
(あるいは):第一財の価格、(あるいは):第二財の価格、x(あるいは):第一財の数量、y(あるいは):第二財の数量、M(あるいはY):所得