松尾匡さんの『新しい左翼入門』
新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)
- 作者: 松尾匡
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/07/18
- メディア: 新書
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メールボックス放置するひとですので、今日、献本していただいたことを知りました。
いつもちゃんと読んでからコメントと思いつつ、結局放置のパターンが多いので、ざっと見た第一印象だけ。(濱口さんのような読書力がないので、ええかげんな第一印象です)
よくまあ、こんな本がかけるなーと関心しました。ほとんどが松尾さん本来の専門を大きくはなれた明治以降の社会運動史があつかわれています。はっきりいって、私なんぞには、松尾さんの描く社会運動史がどれだけ正しいか判断する能力はありません。しかし、松尾さんがこの本を書くために、今までの執筆活動にない種類の努力をそうとうされたことは想像できます。ご苦労さまでした。
帯に「なぜ理想は対立するのか」とありますが、まさしく、明治以来の社会運動史でくりかえされてきた対立軸が焦点になっています。
この二つの道ー理想や理論を抱いて、それに合わない現状を変えようとする道と、抑圧された大衆に身をおいて。「このやろー」と立ち上がる道ーは、常に両方存在し、けっして相容れることなく対立し、そしてその対立はたいてい運動の自滅という形で、共倒れをもって終ってきたのです。
この対立とその趨勢は松尾さんに指摘されれば、とても身近にかんじる、それこそ、世の中のありとあらゆる場所に見いだされるものですが、それを対照軸として、明治から現代という長い期間の歴史を分析する試みは、おそらく始めてだろうと思います。
目次と中身を斜め読みした段階での印象ですが、このような観点からの松尾さんや私の世代にとっての大事件は、連合赤軍、新左翼の内ゲバ、オウム真理教だと思います。松尾さんはこれらにふれてはいますし、『はだかの王様の経済学』などでもあつかっているので、重複をさけたのかもしれません。だけども、この本の図式でこれらを松尾さんがどのように分析するのか、とても興味をもちますし、もっとスペースを割いて欲かった気がします。
ただ、松尾さんの問題意識は連合赤軍、内ゲバ、オウム真理教的なものをどのように私達がのりこえていくのかということにあると思います。また、これらが決っして過去の問題ではなく、このような罠に人びとがはまり続けてきたことを松尾さんは示そうとしているのだと思います。したがって、このことに松尾さんは本全体で答えようとしているともいえると思います。
左翼に興味がなくとも、現状を何らかの意味で変えたいと思っているすべての人に読む価値のある本だと思います。