研究者としての最後から2番目の仕事

Amazonで予約できます。海外ではもう買えるみたい。関係各位、抜刷の送付おくれてすみません。

Time and Space in Economics

Time and Space in Economics

もう、研究者やめるといっときながら、本がでちゃいました。研究者やめても研究ほめられるのはうれしい。

Time and Space in Economics | T. Asada | Springerにはいっている”Corridor Stability of Neoclassical Steady State"という論文です。私のファンなら(いるのかそんなもん)買ってください。

えー、自虐ネタは10個くらい頭にうかぶんですけど、御世話になったエディターの浅田統一郎先生や共著者の堂谷さん、稲葉さん(あの方でないです。もちろん)までくさすことになるので今回は遠慮します。

ちょとだけ、内容を紹介すると、ソローモデルの資本蓄積方程式とフリードマン恒常所得仮説を組み合わせると、コリダースタビリティがすぐにでてくるというものです。コリダースタビリティとは均衡の回りは安定で、その安定な領域をはずれると不安定になるような状況をいっていて、最初にいいだしたのは「ケインズの経済学とケインジアンの経済学」なんかで有名なレーヨンフーブドです。彼は当時の経済システムの安定性についてのイメージは均衡への収束と不均衡が累積していくイメージ、それと、不均衡の累積に上と下に壁があって、そこで反転して、循環繰り返すイメージくらいしかないけど、均衡の近くだと安定で、均衡からあんまりはずれると不安定になるっていうのも考えられるといったのです。

それでいろんなひとがいろんなモデルでそれがおこる状況を確かめたのですが、微係数の3階とか4階とかの条件がからんで、安定性の条件が経済学的にどういう意味があるんかようわからんわけです。そんで、多くの研究は(サーベイしたのは堂谷さんなんで私に聞かないでね)コリダースタビリティだすために無理なこといっぱいしちゃってるわけです。

それで、我々があきらかにしたのは、通常の資本蓄積方程式と恒常所得仮説というみょうちくりんでないセッティングで、なおかつ、通常の経済で一般的なパラメータの範囲で簡単にコリダースタビリティが見出せるということです。新古典派ばりばりセッティングで新古典派的でない経済システムの安定性が導かれたという、新古典派からも反新古典派からも嫌われるような論文になっちゃいました。(あ、ちょっと自虐しちゃった。)

えーと、論文よんでもわかりませんが、私の貢献ですが、本当はこの論文は同じセッティングで内生的な循環を導こうとしてたわけです。そんで堂谷さんが「大坂さん計算やって」といって計算やったら、パラメータ普通の範囲でやっとたらいつまでたっても循環なんかおきないわけです。そんで困って堂谷さんにいって、これこれこうだというと、「おー、それってコリダースタビリティいうねん、おーそんなに簡単にでるんか」とか喜んでるわけです。これ貢献その1。そんで、堂谷さんがちゃちゃっと計算して、生産関数がコブダグラス型でコリダースタビリティがでること証明したわけです。それで、富山に稲葉さん呼んだときにその辺りの証明の話になって、「これがコブダグラスでないといえないのはおかしい。一階の微分プラスで二階の微分マイナスならいえるでしょう」と私がいって、10分考えたら簡単にいえてしまった。これが貢献その2です。あとはぜーんぶ堂谷さんと稲葉さんの貢献です。結構、数値計算とかいろいろやったんですけど、それは今回の論文ではほとんど捨ててしまいました。