資本論を一人で読む人のためへの助言

id:toled 閉鎖記念です。例の件で、終ったあと富山大学近くの餃子屋でビールを一緒に飲んで、id:toled と話していると出来の悪いゼミ生に卒論指導しているような気分になりました。出来の悪い id:toled資本論を読み方を指導してやろう。

私は実は、資本論をまがりなりにも、全部読みました。第二巻の途中くらいからは、全然頭に残っていませんので、第二巻、第三巻は読んでといえるかどうか、自分でもよーわからんのですが、いちよう、全部の字には目を通しています。多分、1年くらいはかかったんじゃないかと思います。

まず、「賃労働と資本」と「労賃・価格および利潤」

資本論はわけわからん本です。いきなり読もうとすると挫折することうけあいです。だからといって、「資本論入門」のたぐいの本を読んでからというんじゃ、原典読む値打ちがおちます。

うれしいことにマルクス自身が出来の悪い id:toled でもわかる経済学の入門書を書いています。まず、これから読みましょう。

賃労働と資本 (岩波文庫)

賃労働と資本 (岩波文庫)

「労賃・価格および利潤」はアマゾンの中古で8000円するんか!!プロジェクト杉田玄白に永江良一 さんのフリーの翻訳がありました。
http://page.freett.com/rionag/marx/vpp.html

価値形態論とは「百円でポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで百円は買えません」ということである。

資本論でいちばんめんどくさいのは、第一巻の最初の価値形態論です。ここは、多くの人が、だれの労働でも同じ労働として集計できるというトンデモ主張をマルクスがしているところと読んでしまうところです。あの頭のいい山形浩生さんでもです。その部分でマルクスがトンデモだというのはそうだと思うのですが、価値形態論が今でも値打ちがあるのは、「百円でポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで百円は買えません」のは、どうしてか、どういう意味があるのか、えんえんと議論しているところにあります。ちゃんと読めば、そこがポイントと判るのですが、「労働価値説はクソ」というところにひっかかって、みんな読めなくなる傾向があるように思います。あそこは「百円でポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで百円は買えません」の話だと知っているだけで、挫折する確率が半分以下に減るでしょう。

参考2006-12-06 - 痴呆(地方)でいいもん。

あと、最初から、貨幣あたりまでの話は後回しにするというのも、いいかも。

第二巻に入るまえに産業連関分析の勉強を

資本論の第二巻の再生産表式論は、おそらく、マルクス経済学が嫌いな経済学者でも、批判なくうけいれる部分だと思います。実際、それは、現在の2部門マクロモデルそのものといっていいと思います。逆にいうと、この部分は、普通の経済学の知識がとても有用な部分です。(私はこれを読んだとき、普通の経済学の知識がなかったので、全然理解できませんでした。)

だけども、普通のマクロ経済学の教科書は、理解の手助けになるでしょうが、再生産表式論とはちょっと距離があります。おすすめは、レオンティエフの産業連関表(もしくは投入産出表)です。

ええかげんな、解説を昔書いてました。http://d.hatena.ne.jp/osakaeco/20040518/p3

それと宮沢健一の次の本もおすすめ。(じつはちゃんと読んでないが)

日本の経済循環

日本の経済循環

ついでに、金曜日の夜にはてなダイアリーの注文したんだけど、閉鎖まで間にあわなかったみたい残念。