ポストケインジアンにおける日銀対リフレの代理戦争と浅田統一郎氏の「『震災復興本』を読む」

と、怒られそうなタイトルをつけましたが、明治大学で9月14から16日まで開催されたInternational Conference on Post Keynesian Economics でのお話です。

予備知識として、主流派からは学問的な裏付けがないとされている日銀理論ですが、実は日銀理論そっくりといわれている金融理論があります。くわしくは以下のリンクを見て欲しいのですが、ポストケインズ派(あえて乱暴にいえば、ケインズ派の中の新左翼みたいに思われている人々です*1 )の代表的な貨幣理論であるカルドアの貨幣理論と日銀理論が類似性が多いことが知られています。
日銀理論=ニコラス・カルドア、白川総裁?①: LAW,ECONOMICS& PHILOSOPHY

だから私は常々、日銀理論を擁護するポストケインジアンはいないのかなー、あるいは、日銀自身がカルドア引用して、リフレ派と論争したりしないかなーと思っていたわけです。

こういえば皮肉に受け取られるかもしれませんが、全然、そうではなく、日銀なり、日銀に騙された説得された皆さんの見解のなかには、主流の経済理論ではあつかわれていない論点がたぶんあって、そのあたりがキチンと理論化されていないので、議論がふかまらない点があるように感じていました。

さて、このカンファレンスに16日の午後から出席していたら、"Bernanke and the Japanification of the U.S. Economy"という福井県立大学の服部茂幸氏の報告がありました。乱暴に要約すると、バーナンキをポスケケインジアンの貨幣理論の立場から批判し、リフレ派の「日銀、お札刷れ刷れ」も、一緒にゴミ箱行きにしてしまおうという意欲的なものでした。

私は浅田統一郎氏がなんかいうだろうなと期待していたら、案の定、浅田氏からコメントがありました。これまた乱暴にコメントすれば、対立点は

  • 服部氏「バーナンキ信用制度の不安定性を考慮しないから、簡単に貨幣刷れ刷れいう」
  • 浅田氏「すでに不安定性が発現した時点で、不安定性を心配してお札刷らないのは、おかしい」

ということだと思うのですが、どうでしょうか。

カンファレンスの質疑の短い時間だったので、あまりつっこんだ議論はもちろん無理だったのですが、今後、他の研究者もまきこんでの議論がふかまることを期待しています。

あと、会場で田中秀臣くん*2の紹介ではてな界隈でも有名な「震災復興本」を読む:原発問題と復興資金の財源問題を中心に:研究:Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)を浅田さん御自身が配っていました。「田中に送ったらブログでとりあげたぞ、とりあげたぞ」と私にさかんにうれしそうに、おっしゃります。もしかしたらこれは「お前もブログにのせろ」という圧力かと妄想したりしたんですけど、こんな下品なブログを浅田さんが御読みになるはずがない、仮に読んでいたら、こんな下品なところに、暗に「載せろ」というわけないとおもいつつ、妄想が本当だったら嫌われそうなんで、紹介してしまいました。

という冗談はともかく、浅田さんの文章は増税路線まっしぐらの読売のサイトにのっているとは信じられない、まっとうな「お札刷れ刷れ」の、すばらしく、またとてもわかりやすい文章なので、読売の検閲がかかる前にみなさまぜひ。IS-LMモデルをしっている人にとっては(知らないひとにもお勧めしますが)、震災復興費調達の手段として日銀の国債引受けの主張する文章のなかで、もっともわかりやすく、かつ短いものの一つだと思います。公務員試験の経済学の準備にもなるかも。

*1:みなさま、ごめんなさい。

*2:いつまでくんづけなんでしょうか